産廃収集運搬の位置付け@福岡
産業廃棄物を法律と契約に従い運搬します。
収集・運搬業の役割
(1)収集・運搬業の役割を端的に言い表せば、「排出事業者から委託された廃棄物を、法律と委託契約に従い、性状を変えることなく、飛散、流出を伴わないように留意して、処分業者まで迅速に運搬すること」です。
排出業者は、処理を委託する産業廃棄物について、処分業者と委託契約を締結し、マニフェストを交付することから、収集・運搬業者としては、前述のとおり、法律と契約に従った行動が求められることになります。特に収集・運搬業者が社会から求められる留意事項についていかに記載します。
収集・運搬業としての留意事項
1)法的義務 廃棄物処理法で規定している法的義務のうち、収集・運搬業者が起こしがちな違反事項について以下のようなことがあげられることから注意を要します。
①無許可行為(5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はその併科) 許可を取得しているにもかかわらず、無許可となるということは想定しにくいと考えられますが、廃棄物処理法の規定上、次のような場合は無許可となるので、十分に注意が必要です。
ア 一般廃棄物を取り扱った場合
廃棄物処理法では、一般廃棄物と産業廃棄物の処理業の許可は、全く別の許可となっています。そのため、産業廃棄物の許可を有していても、一般廃棄物を許可なく扱った場合は無許可となります。
イ 産業廃棄物の許可で特別管理産業廃棄物を取り扱った場合
廃棄物処理法では、産業廃棄物と特別管理産業廃棄物の処理業の許可は、全く別の許可となっています。そのため、産業廃棄物の許可を有していても、特別管理産業廃棄物を許可なく扱った場合はむきょかとなります。また、逆に特別管理産業廃棄物の許可を有していても、産業廃棄物を許可なく扱った場合は無許可となります。
ウ (特別管理)産業廃棄物収集運搬業の許可で中間処分行為をした場合
(特別管理)産業廃棄物の収集運搬の許可で可能なのは、積替保管時に行う手選別程度までです。「脱水」、「破砕」、「選別」、「圧縮」のように、物理的、化学的又は生物学的な手段による変化を伴う行為は中間処分に該当するため、別途(特別管理)産業廃棄物処分業の許可が必要となります。
エ 許可を受けていない地域で(特別管理)産業廃棄物を取り扱った場合
(特別管理)産業廃棄物収集運搬業の許可は、積卸を行う区域の知事等の許可が必要であり、許可を受けている都道府県等以外の場所では、その許可は効力を有しません。そのため、許可を受けている区域外で取り扱った場合は、無許可となります。
②無許可変更(5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科)
ア (特別管理)産業廃棄物の種類の追加
(特別管理)産業廃遺物収集運搬業の許可は、(特別管理)産業廃棄物の品目ごとに許可されていることから、例えば「廃プラスチック類」の許可を有していても、「汚泥」を収集運搬すれば無許可変更となります。品目を追加する場合は、あらかじめ品目追加の変更申請を行い、変更許可を受けなければなりません。
イ 積替保管行為の追加
(特別管理)産業廃棄物収集運搬業の許可のうち、「積替保管なし(除く)」の許可で、積替保管を行うと無許可変更となります。積替保管を行うには、積替保管行為追加の変更許可申請を行い、変更許可を受けなければなりません。
③変更届の無届(30万円以下の罰金)
廃棄物処理法による罰金は欠格要件に該当し、許可を取り消されることになりますので、罰金といえども十分な注意が必要です。
ア 収集運搬車両の変更
イ 法人役員の変更
④両罰規定(3億円以下の罰金)
許可業者の業務に関して、その従業員や使用人が廃棄物処理法に規定する違反行為をした場合、許可業者にも罰金が科されます。この場合、許可業者は欠格要件に該当することとなり、許可を取り消されることになります。そのため、日頃から従業員や使用人が法を遵守するよう指導するようにしなければなりません。
⑤その他、許可業者には、帳簿等の義務もあり、また、行政により報告が求められたときは、これに応じることが規定されていますので、これらの規定については厳守しなければなりません。
2)受託基準遵守等の方策
①(特別管理)産業廃棄物の種類や性状が明らかでないもの、許可を受けた事業の範囲を超えるものは受託してはなりません。受託にあたっては、排出事業者の事業内容の確認や、廃棄物データシート等を利用して廃棄物の性状等を十分に把握しなければなりません。
②廃棄物を収集する時は、排出事業者から交付されたマニフェストと現物で相違がないことを確認します。
③(特別管理)産業廃棄物①の収集運搬を行う場合には、取集運搬車両の車体の側面に(特別管理)産業廃棄物の収集運搬の業に供する車両であることを表示するとともに、収集運搬車に許可証の写しと交付を受けたマニフェスト若しくは電子マニフェストの使用証等環境省令で定める書面を備え付けます。
④収集運搬に当たっては、過積載にならないように留意します。過積載は、法律違反で処罰されるばかりでなく、安全性やブレーキ性能、ハンドルの操作性等を低下させ、交通事故発生の可能性を増大させます。
3)社会的要請事項
前述の事項は、法律の規定もあり、「やらなければならない」事項ですが、これからの産業廃棄物取集運搬業に求められることは、最低限の義務を遵守していればよい、ということではありません。中小規模の排出事業者は、法規制やリサイクルルート等の廃棄物に関する情報に接する機会が少なく、廃棄物処理や関連の法規制等についての知識が乏しい場合があります。収集運搬業者は、排出事業者への情報提供等を通じ、適正な廃棄物処理システムの構築や改善に寄与することができる立場であり、業の運営に当たって、排出事業者へ次のような取り組みを行うことが求められています。
①法規制情報の提供
②中間処理業者、最終処分者の情報提供
③分別排出やリサイクル方法等のアドバイス
このように収集運搬業者は、排出事業者と処分業者の両者の条件並びに自社の保有する技術・能力等を考慮し、廃棄物処理の各要素が有機的に結びついたシステムの構築に努め、排出事業者への啓発や支援を行うことが大切です。このような個々の企業努力が、廃棄物処理業や静脈産業の信頼性の向上や活性化へとつながります。
以下に、排出事業者をはじめとして、社会から求められる収集運搬業の取組みについて列挙します。
①環境保全事業としての社会的責任は、極めて重大であることを認識し、適切な収集運搬技術の開発や改善に努めるとともに、環境汚染等の被害を生じさせないように努めなければなりません。
②廃棄物に関する法規制の制定や改正が頻繁に行われています。このような法改正の変化を察知し、これに対応した行動ができる体制の整備に努めなければなりません。
③近年、廃棄物の質も大きく変化してきており、従来の技術だけでは対応できないものも多いことから、専門業者としての自覚を持ち、常に新しい技術の修得に努めなければなりません。
④排出事業者から求められた改善等の要請に積極的に取り組むとともに、常に、(特別管理)産業廃棄物の処理の流れを確認して最も適切な処理システムの構築に心がけなければなりません。
⑤日頃より地域住民や自治体の理解と協力を得ることに努め、苦情等に対しては直ちに誠意をもって対応しなければなりません。
⑥地域社会の一員としての認識と情報公開をベースにした事業運営を行い、地域社会との信頼関係を確立しなければなりません。
⑦適正に処理に必要な処理料金で受託し、採算性を向上させて経営の安定化を図らなければなりません。